薄暗い外灯の下、先輩の顔はそこまでハッキリとは見えないけれど。


その瞳は、真っ直ぐ私に向いていた。


「守るって約束したし。

お兄さんが見つかるまで、兄と思ってくれていいよ」


「そ、そんな。

兄の身代わりだなんて……。

そんなの先輩に悪いです」


年齢も名前も一致して、面影すらあると、錯覚してしまうのに。


それに先輩は先輩なんだから、たもっちゃんの代わりになんてしちゃいけないと思う。


「白石。

俺の言う通りにしておいた方が良いんじゃないか?」


「はい?」


「俺。白石がバイトしてる事、学校にバラしちゃうかもよ」


「えぇっ?」


なんで今ここで、バイトの話が?


「バラされたら困るだろ?

だったら、素直に従って」


「えー……」


なん、か。


やっぱりちょっと強引だよね、黒崎先輩って。


「先輩って、変わってるって言われませんか?」


「えー、俺そんなこと言われないけどな」


そうかなあ?

 
似ている人の身代わりなんて、普通はなりたくないと思うけどな。


そんなことをブツブツ考えていたら、いつの間にか先輩が私の正面に立っていた。


「ーと言うわけで。

よろしくな、妹」


そう言って、私の頭をぽんぽんと撫でる先輩。


昔、たもっちゃんにされていたのを思い出して、胸がキュンと音を立てた。