キミさえいれば

「はーい」


パタパタと走る足音。


私と同じ栗色の髪をした女の子が、お部屋から飛び出して来た。


「ママー、おかえりー」


そう言って私に抱きつく娘。


「ただいま、里穂。

いい子にしてた?」


「うん、いい子にしてたー。

あっ、ママこれあげる」


「なあに?」


「ママと栄子ママの絵を描いたの」


「わぁ、上手ねー。すごくよく似てるわ。

栄子ママ、エプロンしてるね」


「そう。お仕事してる栄子ママを描いたのー」


白い大きな画用紙に描かれているのは、私と母さんの絵。


親バカでもなんでもなく、本当に上手いと思う。


絵の才能は、私の血を受け継いだのかな?


「里穂ちゃんもうすぐこの保育所を離れるんですねー。寂しくなりますー」


駒沢先生が泣きそうな顔をして言った。


「今まで本当にお世話になりました」


私はぺこり頭を下げた。


「初めて里穂ちゃんがこの保育所に来たのは2歳の時でしたっけ。

つい昨日のことのようですねー」