ケーキを食べてお店を出た頃には、太陽がかなり西に傾いていた。


私は歩道をゆっくりと歩いた。


あと少しで3月も終わる。


歩道脇に並ぶ桜の木も、もう開花目前だ。


卒業かぁ。


勉強なんて全く出来ない私が、短大を卒業する日が来るなんて。


なんだか胸がいっぱいになってしまう。


人より遅い入学だったから、同級生の子達はみんな年下だったけれど。


個性的な子が多いせいか、誰も私のことを悪く言う子はいなかった。


本当に楽しくて充実していて、幸せな学校生活だった。


ここに来なければ、勉強する楽しさなんて一生知ることはなかったかもしれない。


進学させてくれたお父さんと母さんには、本当に感謝でいっぱいだ。


そんなことを考えながら歩いていたら、あっという間に目的地に着いていた。


白い門扉を押し開けて中に入ると、子供達の楽しそうな笑い声が聞こえてきた。


りすの絵の描かれた部屋の前で、私は足を止めた。


「駒沢先生、こんにちは」


「あ、こんにちは。


ちょっと待っててくださいねー。



里穂(りほ)ちゃーん。



お母さんがお迎えに来たよー」