佐々木さんは39歳の独身男性。


クマみたいに大きくて、とても心優しい人だ。


この歳まで独身だったのは、お店を軌道に乗せるのが大変だったからだって言っていたけど。


「凛ちゃん、もうすぐ卒業だね」


「はい。そうですね」


「親元から離れるらしいじゃない。栄子さん寂しくなるねー」


「そんなことないわよ。

これで肩の荷が下りるってものよ」


「ホントかなあ」


「これからは一人で羽を伸ばすつもりよー」


「もう母さんったら。

本当は寂しいくせにー」


私がそう言うと、母さんはクスクスと笑った。


「佐々木さん、うちの母のことお願いしますね。

出来れば、公私共に……」


「えぇっ?」


顔を真っ赤にする佐々木さん。


母さんは意味がよくわかっていないのか、きょとんと首を傾げている。


私は知っている。


佐々木さんは、私の母のことが好きなんだよね。


母さんだって、まんざらでもないはずなんだ。


だって、しょっちゅう二人でイチャイチャしてるんだもの。


私に若いお父さんが出来るのも、そう遠くない未来かもしれないなあ。