午後の講義が終わると、私はバスに乗ってとある場所を目指していた。


短大からバスで15分ほどの場所にある小さなお店。


木の扉をガチャンと開けると、チリンと鈴の音がした。


「いらっしゃいませ。

あ、凛ちゃん」


「こんにちは、佐々木さん」


私はいつものカウンターから一番近い席に腰を下ろした。


「あれ? 母さんは?」


「栄子さんねー、今買い出しに行ってもらってるんだ」


「そうなんだ」


「ケーキ食べる?

栄子さん特製のシフォンケーキがあるよ」


「やったー。食べる食べるー」


しばらく待っていると、佐々木さんがケーキを運んで来てくれた。


少し太めの大きな手で、ホットコーヒーも添えられる。


「わぁ、おいしそう。いただきまーす」


母さんのケーキは絶品だからなあ。


「紅茶シフォンだね。おいしい」


「もうすぐ帰って来ると思うから、ゆっくりしてて」


「はーい」