キミさえいれば

お父さんの話を聞きながら、先輩は静かに涙を流していた。


私も泣いていた。


「父さん、ありがとう……。

俺を引き取ってくれて」


先輩の言葉に、お父さんが目を細める。


「まだ1歳の保を施設に送るなんて、可哀想で絶対にイヤだったんだ。

それにお前は綺麗な顔をしていて、とても聡明に見えた。

きっと、いい子に育つと思ったんだ」


そうだったんだ。


そんな経緯で……。


優しいお父さんらしいなと思った。


「でも……。

ちょっと腑に落ちないな……」


先輩がぽつり呟く。


「父さんと母さんは、どうして離婚しなくちゃいけなかったんだ?」


先輩の言葉に、お父さんとお母さんが目を見開いた。


「血が繋がらない兄妹なら、俺が凛を思っていたってかまわなかったわけだよね?

どうしてそれが離婚の原因になったの?」


確かに先輩の言う通りだ。


どうしてお父さんとお母さんは、離婚してしまったんだろう。


その時、母さんが大きなため息をついた。


「保。

離婚はね、私の一方的な要求だったの。

洋二さんは、最後まで離婚したがらなかったのに……」


お母さんの一方的な……?


「どうして……? 母さん……」


先輩の問いに、母さんは目を閉じて呼吸を整えた。