キミさえいれば




柳瀬と夕紀と父さんは、大学時代からとても仲が良くて、卒業後もよく一緒に遊んでいた。


父さんが栄子と結婚してからも、柳瀬達に保が生まれてからも、お互いの家を行き来するような仲だった。


そんなある時、柳瀬の父親が突然倒れて入院したんだ。


柳瀬は一人っ子だし、母親は既にこの世にいなかったから、看病をするのは柳瀬と夕紀しかいなくて、二人はすごく大変そうだった。


あまりに忙しそうだったから、僕が休日のたびに保を預かってたんだ。


保の子守りをしてあげるから、ゆっくりお父さんを看てあげるといいよと言って。


そんなある日の病院の帰り、二人は事故に遭って、そのまま亡くなってしまった。


保を預かっていた僕らは、二人の葬儀の時に保を連れて行ったんだ。


だけど……。


保を引き取ってくれる人が誰もいなかったんだ。


夕紀の両親は兄夫婦が同居していて、子供が三人いるから、これ以上は無理だと言うし。


そして頼みの綱の柳瀬の父親も、その後容態が悪くなって亡くなってしまって。


親族は、保を施設に入れると言い出したんだ。


その頃の僕は、もうすっかり保に情があったし。


柳瀬達の大切な息子を、施設に送るだなんて。


そんなことになるくらいなら、引き取って息子として育てたいと。


そう思ったんだ……。