キミさえいれば

ひとしきり二人で泣いた後、先輩が身体をゆっくり起こした。


「なあ、父さん。

俺の本当の両親は今どこにいるの……?」


涙目のまま、先輩がお父さんに尋ねた。


お父さんはなぜか遠くを見るような目をして、ゆっくり息を吐いた。


「保。

お前に真実を伝えるよ。

お前の本当の両親を教える。

もう、受け入れられるな?」


お父さんの言葉に、先輩はコクンと頷いた。


「お前の本当の親は、柳瀬(やなせ)(りく)夕紀(ゆき)と言う。

あ、父さんの手帳の中に写真がある」


そう言ってお父さんはポケットから手帳を取り出し、先輩に写真を手渡した。


それを先輩が私にも見えるように傾けて、私達は一緒に写真を見た。


そこには背の高そうな綺麗な顔立ちの男性と、優しそうな可愛らしい女性が写っていた。


そしてその女性は、先輩にとても良く似ていた。


「この二人は、父さんの大学時代の友人だ」


そうなんだ……。


先輩のご両親は、お父さんの友達なんだ。


「-で、俺の両親は今どこに……?」


先輩の問いに、なぜかお父さんが悲しそうに目を伏せた。


「もう、この世にはいない……。


交通事故で亡くなったんだ……」