「凛。

俺が大学を卒業するまで、辛抱してくれないかな。

そうしたら俺、この街を出るから。

俺達のことを、誰も知らないところへ」


「先輩……」


「その時、凛も一緒においで。

一緒に暮らそう」


そう言って、肩を抱き寄せてくれる先輩。


その手はとてもあたたかい。


「あと4年とちょっとかぁ……。長いなあ……」


思わずボソッと呟いた。


「たったの4年だよ、凛。

近くに住んでるし、いつでも会えるんだし。

それまで、両親の前では兄と妹のフリをしよう」


「街中でも気をつけないとダメだよ。

誰に見られるか、わからないもん」


「うん、わかってる……」


先輩の腕に力が入って、ぐっと引き寄せられる。


私はそっと先輩の胸に頭をもたれた。


「凛、大丈夫。

心配はいらない。

俺は、凛さえそばにいてくれたらいいんだ。

ホントに、ただそれだけで……」


「うん、私もだよ……」


近くにいられる。


それだけで充分だ。


それ以上贅沢を望んだら、きっとバチが当たるよね。


ふと先輩を見上げると、先輩の横顔がオレンジ色に染まっていた。


私の視線に気づいた先輩がニッコリと笑う。


その綺麗な顔がゆっくり近づいて来て、私達は優しく短いキスを交わした。


嘘をつくこと。


罪を重ねること。


悪いことだってわかってる。


でもそれでも私は、先輩との恋を守ろうと。


この時、心に誓った。