キミさえいれば

「凛、帰りは車で送ってあげるから、夕飯を食べて帰りなさい。

お父さん、すぐ準備するから」


そう言って、パタパタとキッチンに向かうお父さん。


「えっ? 

お父さん料理するの?」


そんな姿、あの頃は見たことがなかったけど。


「うん。

お父さん再婚してから、料理を覚えたんだ。

奥さんが忙しい人だからね。

自然とそうなったんだ」


「そうなんだ。

じゃあ、私も手伝うね」


「ありがとう」


私とお父さんはキッチンに立って、一緒に料理を作り始めた。


今日のメニューはロコモコ丼と野菜のスープらしい。


私は米を研いだり、野菜を切ったりした。


こうしてお父さんと何かをするのは久しぶりで、なんだか胸がいっぱいになってしまう。


先輩は私とお父さんが仲良くキッチンに立つ姿を、終始優しい瞳で見つめていた。


夕飯を美味しくいただいた後、私と先輩とお父さんはリビングのソファに腰掛けた。


しばらく三人で仲良くおしゃべりしていたけれど、私と先輩はお互いタイミングを見計らっていた。


そう。


今日ここへ来たのは、単に遊びに来たからではなく、お父さんに大切な話があるからだ。