上目遣いの先輩に、私の目がパチパチしてしまう。


「いい?」


少し口を尖らせる先輩がなんだか可愛くて、私は自分から先輩の胸に飛び込んだ。


私の頬が先輩のブレザーにしっかり触れる。


先輩はなぜかぎこちなく、私をそっと抱きしめた。


「凛……。

なんかすげぇ嬉しい。

多分これ、俺の中の兄貴の部分が喜んでるんだと思う……」


そう言って、じわじわと力を込めていく先輩。


先輩の腕の中はなつかしくて、あたたかくて、涙が滲んでしまう。


嬉しい。


先輩が戻って来てくれた。


しかも、たもっちゃんを連れて。


こんな嬉しい事はない。


たもっちゃんとの思い出も、先輩との思い出も、どちらも今ここにある。


好き。


大好き……。


溢れ出す思いの中、急に不安が私の頭をよぎった。