キミさえいれば

「なんか凛、戸惑ってるね」


「うっ」


だって、なんだか雰囲気が違うんだもの。


たもっちゃんとも違うし、先輩とも違う。


なんだか不思議な気分だ。


「たもっちゃんって呼べばいいの?

それとも先輩って呼べばいいの?」


それすら混乱してしまう。


「うーん。

今の俺って、たもっちゃんっていうOSに、先輩っていうアプリが乗ったって感じかな?」


「は?」


何それ?


全然意味がわからない。


「どう言えばいいんだろう。

多分ベースは兄の保だけど、機能してるのは先輩って感じ?」


ますますうーんと首を傾げてしまう。


「まぁ要はさ、兄でもあり先輩でもあるって事。

でも最近まで先輩だったから、先輩の方が強く出てると思う。

兄の記憶のある先輩だと思って」


いやいや、全然わからない。


「とにかくさ。

俺は凛がすげぇ好きって事。

たとえ妹でもね」


非常階段の下から爽やかで涼しい風が吹き上げて、先輩の長い前髪を優しく揺らす。


それがあまりに綺麗で、何かの映像でも見ているような気分になった。


「俺……、ずっと凛が好きだった……」


先輩の言葉に、トクンと心臓が優しい音を立てた。


「意識しはじめたのは、俺が小6の頃……」