キミさえいれば

「読んでいくうちに少しずつ思い出していったんだ。

凛と出会った時のこと、凛を好きになったこと、凛に告白したこと。

全部……」


「全部?」


たもっちゃんは、コクンと頷いた。


「凛が“先輩”って呼んでた俺を、全部思い出したんだ……」


うそ……。


本当に……?


「ホントに先輩なの……?」


信じられない……。


なんだか違う人みたいで……。


そう思っていたら、たもっちゃんが急にグッと顔を近づけて来た。


「ホントだよ、凛。

全部、覚えてる。

凛を抱いた事も……」


耳元で囁かれて、一気に顔に熱が帯びた。


「ね。俺、“先輩”でしょ?」


ニッコリと笑うたもっちゃん。


確かにそうだけど……。


「凛。

俺が思い出したのに、嬉しくないの?」


さみしそうに話すたもっちゃんに、私は首を横に振った。


「ううん。すごく嬉しい。

出会ってからのこと、全部忘れられたんだと思ってたから。

でも先輩、なんだか違う人みたい。

眼鏡をかけてないからかな?」


なんかこう……爽やかになったというか……。


ますますイケメンになっちゃって、正直ちょっと恥ずかしい。


「あー、うん。

なんか眼鏡かけるのイヤで、コンタクトにしたんだ」


私達が離れ離れになる前、たもっちゃんは眼鏡をかけていなかったから。


それで、なんだか落ち着かないのかな……?