キミさえいれば

「凛、俺に全然会いに来てくれなかったね」


ふぅとため息をつくたもっちゃん。


「俺、寂しかったよ。

凛に会いたくてたまらなかったのに……」


せつなそうなその顔に、ギュッと胸の奥が痛くなった。


「でも、わかってた……。

凛が“先輩”って呼んでた俺が、いなくなったと思ったからだろう?」


「え……?」


それってどういう……?


「これを見て」


そう言ってたもっちゃんが差し出すのは、先輩が使っていたスマホで。


「父さんから“保のスマートフォンだよ”って渡されて。

俺……家にいる間、このスマホの中身をずっと見てたんだ。

そしたらメッセージのやり取りをしているのは凛ばっかりで。

最初はビックリしたんだ。

こんな会話を、凛とした覚えなんてないし。

だけど……」


「だけど……?」


そう言ってたもっちゃんの顔を見たら、たもっちゃんがきゅっと目を細めた。