キミさえいれば

「ちょ、ちょっと凛!」


突然、美咲が私の腕を掴んで揺らした。


「ど、どうしたの?」


ビックリして顔を上げると、美咲が教室のドア付近を、穴が開くほどじっと見つめていた。


「あれって、黒崎先輩……?」


美咲の言葉に、ドクンと心臓が大きく波打つ。


「一瞬誰だかわからなかったわ。

眼鏡外してるから……。

すごい……。

めちゃくちゃカッコイイ」


瞳がハートになってる美咲に驚きつつ、私も視線をゆっくりドア付近に移した。


「あ……」


たもっちゃんだ……。


私と目が合うと、たもっちゃんはニッコリと笑って手を振った。


「凛、良かったね。

先輩、今日は学校に来てたんじゃん。

早く行っておいでよ」


美咲が自分の肘をグリグリと私の腕に押し付ける。


「うん……。行って来るね」


美咲に手を振ると、私はたもっちゃんの方へと走った。