キミさえいれば

病室を出た途端、私はへなへなとその場にしゃがみこんだ。


涙がぽたぽたとスカートの上に落ちていく。


泣き叫びたいけれど、口を両手で押さえて必死に声を押し殺した。


たもっちゃんが記憶を取り戻した。


それはすごく喜ばしいことだ。


私だってずっと会いたかった。


会いたくて会いたくてたまらなかった。


それなのに私、こんなにも悲しい。

 
だって、それは……。


先輩の死を意味してるから……。


私と先輩との思い出が、消えて無くなることだから……。


生徒会室で、岸先輩から守ってくれたこと。


何度も二人乗りした自転車。


一緒に食べたコロッケ。


文化祭の日にしてくれた告白。


初めてのキス。


暴漢やハヤト君から助けてくれたこと。


あんなに激しく愛し合ったことも。


全部全部。


綺麗に消えて無くなってしまった。





私の愛する人は……。




この世からいなくなってしまった……。