夜の街を、ひたすら自転車を漕いで行く。


10月の終わりの夜風は、冬の気配を感じさせる。


今日、先輩は合気道の練習日。


私は道場の前で先輩を待った。


心臓がドクドクして止まらない。


先輩に会わなくちゃ。


絶対に会わなくちゃ……。


不安で押し潰されそうになるけれど、必死に堪えた。


しばらく待っていると、練習を終えた先輩が道場の中から出て来た。


「凛、どうしてここに?」


私を見つけた先輩が、ビックリした顔で目をぱちくりさせる。


「先輩……!」


思わず先輩の腕にしがみついた。


「凛、どうした?

何かあったのか?」


心配そうに私を見つめる先輩の顔が涙でよく見えない。


「とりあえずここからは離れよう」


私達は自転車に乗り、道場を後にした。