キミさえいれば

「知らなかったわ。

洋二さんと保がこの街に住んでいたなんて。

しかも、保と凛が会ってたなんて。

まさか、ここまで追って来たのかしら?」


母さんはひどく落ち着かない様子だ。


「母さん。

お父さんは、私達がこの街に住んでるって知らないよ。

たもっちゃんに会ったのは、本当に偶然だったから」


なぜかすごくつらそうな顔をする母さん。


どうしてなんだろう。


「凛、どうしてお母さんにすぐに言わなかったの?

お兄ちゃんに会ったこと」


「ご、ごめんなさい……」


だって言えない。

 
私と先輩は……。


「凛、引っ越そう。

おばあちゃんの家に行こう」


「は? えっ? な、なんで急に?」


母さんのいきなりの発言に、私の頭は全く追い付かない。


「この街には、もういられないわ」


「ちょ、ちょっと待って。

母さん、どうしてなの?

母さんだって、自分の息子に会いたいと思わないの?

会えて嬉しくないの?」


お父さんに会えないのはわかるけど、どうしてたもっちゃんまで連絡を断たないといけないの……?


「凛……」


「なに……?」


母さんがあまりに真剣な顔で私を見つめるから、私はゴクンと息を呑んだ。


「お父さんとお母さんが別れた本当の理由。


教えてあげる……」