学校から少し離れた場所から、私と先輩は二人乗りを始めた。


9月の夕方の風は、涼しくて気持ちがいい。


「あっ、先輩。

今の時間にアパートの近くに行くと、母さんと鉢合わせしちゃうかもしれない」


「そうなんだ。

じゃあ、バス停まで送るよ」


私の家から一番近いバス停に着くと、先輩と私はベンチに腰掛けた。


ここはメイン道路で、行き交う車の交通量がとても多い。


「あと30分は一緒にいられる」


スマホの時計を見た先輩が言った。


あーあ、あと30分か。


でも、それでもいい。


先輩と一緒にいられるなら。


「凛、俺な。

N大の指定校推薦もらったんだ」


「えぇっ? N大?」


N大って確か、県内で一番入るのが難しい私立大学だよね?


へぇぇ、先輩って賢いんだなあ……。


そう言えば、たもっちゃんも頭が良かったっけ。


「生徒会長をやってたし、そういう意味じゃ有利なのかもな。

10月に面接で、11月の終わりには合否がわかるから、そしたらもうゆっくり出来るよ」


「そうなの?」


「N大なら自宅から通えるし、ラッキーだよ。

凛は大学はどうする?

俺と同じ大学目指す?」


「え……?」


うぅぅ~、どうしよう……。


「先輩……あの……、ごめんなさい。

私、勉強はあんまり出来ないんです」


「えっ、そう。そうなの?」