キミさえいれば

それからの毎日は、なんだか生きた心地がしなかった。


心にぽっかり穴が開いて、世界が急に色褪せたような気がした。


「凛ちゃーん」


クラスメイトの呼ぶ声がする。


声のする方に顔を向けるとそこには、浮田先輩の姿があった。


私を手招きする浮田先輩。


私はガタンと椅子から立ち上がり、浮田先輩のところへと向かった。


「白石。今、少し話せる?」


「はい……」


先輩は私を教室の外へと誘導し、階段を下りて、下駄箱付近でその足を止めた。


「なぁ、白石。

お前と保、なんかあったの?」


振り向きざまに浮田先輩が真剣な顔で私に尋ねた。


先輩は野球部を引退してから髪が伸びていて、今では短髪とは呼べない長さになっていた。


「保の様子がおかしいんだ。

情緒不安定って言うのかな。

殺気立ってて、誰も近寄れないんだ。

白石と何かあったのかなって」


先輩……。