キミさえいれば

私の言葉を聞いた先輩の目から、次第に光が無くなっていくよう。


「凛、どうして……?」


震える声で尋ねる先輩に、胸が締め付けられる。


「凛、俺が嫌いになった?

信じられないよ。

どうして急に?」


私の肩をガシッと掴む先輩。


その強さに、少し怯みそうになるけど。


「ご、めんなさい……」


「ごめんって何?

理由を聞かせて。

じゃないと俺、納得出来ない」


たもっちゃん……。


どうして覚えてないの?


私、凛だよ。

 
お兄ちゃんの妹だよ。


兄と妹は付き合えない。


愛し合っちゃいけないんだよ。


すごく会いたかった。


たもっちゃんを忘れたことは、一日だってない。


たもっちゃんに会えたら、もう死んでもいいとさえ思ってた。


やっと出会えたのに、どうしてこんなに残酷な結果になってしまったの?


「凛……!」


苦しそうな先輩。


先輩に、こんな表情をさせている自分が悲しい。


その時、予鈴のチャイムが鳴った。


「さよなら……」


そう告げて、私はその場を走り去った。


「凛……!

俺はいやだ!

絶対別れないから!」


先輩の叫び声が階段に響き渡る。


その言葉が痛くて、つらくて……。


壊れてしまいそうだった。