「ただ……ただいま」


不安から安堵の色に変わった明の顔には、自然と笑みが浮かんでいた。

ニッコリしている明の頭を、父親の春樹がクシャっと撫でる。


「おかえり。今日のご飯何にしよっか?」


明は少し唸って考え始めた。


「うーん……お母さんハンバーグが良い!」


少しの曇りも無い明の顔を見て、春樹の顔が曇っていく。



「お母さんハンバーグかぁ……困ったなぁ」


頭を掻く春樹の姿を見て、明は心配そうな顔で言う。


「あ、じゃあハンバーグじゃなくていい!」


慌てて言う明を見て、春樹が目を細める。


「いいよ、お母さんハンバーグ。久しぶりだし」


そう言うと、春樹は台所に向かった。


それを見届けると、明は自分の部屋に行った。

音を起てずにドアの開け閉めをする。


忍び足でベッドまで行くと、明はそのままベッドに倒れ込んだ。

明は倒れ込んで、枕に顔を埋めている。



「……今日は、大丈夫」


そう呟くと、明は起き上がった。

シャツの袖を、肘まで捲り上げる。

白い腕には、無数の切り傷と火傷があった。