小学生が、誰も使わないような道を歩いている。

狭く、薄暗い路地裏を、その小学生がすり抜けていく。

赤いランドセルを揺らしながら、その小学生はどんどん進んでいく。


そして、ベージュの壁の一軒家の前で止まった。

赤いランドセルの少女は、深呼吸をしている。


微かに、少女の手が震えている。

震えが止まらない手で、少女は門を開けた。

鉄と鉄が軋む音がして、門がゆっくりと開かれる。

重い足を引きずりながら、少女はドアの前に立った。


真っ白な顔には、不安の色が伺える。


固く目を瞑り、少女は勢い良くドアを開けた。


「た、ただいま!」


高い屋根の玄関に、少女の声が木霊する。

少し間があってから、返事が聞こえてきた。



「明?おかえりぃ」


不精髭が生えた、金髪の男性が出てきた。

この人が、明と呼ばれた少女の父親。

どうやら、今まで眠っていたのだろう、おぼつかない足取りで何とか玄関まで来ていた。