彼の笑った顔がとても印象的だった。

屈託のない、あどけない笑みに
僕は惹かれたんだ。


笑窪が浮かぶその笑顔は
夜空に浮かぶ星を見つけたみたいに
心踊らせられた。

だけど彼は。

苦笑気味の濁った笑みを浮かべながら
日々を過ごしていた。

その笑顔がとても辛くて、
やるせない気持ちで胸を覆われた。


あの幼子のような無邪気な笑顔は
幻だったのかと思う程。

笑いたくもないのに
笑わなくてはいけないから、
彼は、笑って、繕う必要もないのに
笑顔を取り繕った。


混沌とした頭で思った。

彼は多分きっと。

自己犠牲を容認している。