「まあ今更そんな話するのも、ちゃんちゃらおかしいけどね。昼までその話題を残しておくメリットなど、皆無だし」


私が頬杖をつきながらため息を漏らすと、鮎川は慈愛に満ちた表情で笑った。

「もう飽きたの?早すぎよ。今日一日は、所謂一般的偶像にすぎない未来を担うには不安要素が多すぎる女子高生を演じる約束でしょう?」


早弁をしたため腹はみたされており、購買にいく気も起きなかったが、相川にこう責め立てられてはうるさくてかなわない。
仕方ない。方便として使わせてもらおう。


「私、さっき弁当たべちゃったから…」


わずらわしさを隠すこともなく、席を立ちかけた私を相川が右手で制す。

「はい、このパンあげるわ。もう私はお腹いっぱいだし」


先ほど変わらぬ仏のような微笑みとその行為。

しかし私には昼休みの残り全てを無益な責め苦にするであろう、始まりを告げる宣布にほかならなかったのである。