そもそも、なぜ私はこいつが好きなんだろう…。 片想いしたことのある人ならば一度は持つであろう この‘‘疑問”。

藍は何度もこの疑問と向き合ってきたが、答えは出ない。
この憎たらしいニセ紳士を好きな理由が、いくら考えても出てこない…。

出会いは、一年前だった。
高校に入学してガチガチだった藍に、
【彼】が話しかけてきた。
「緊張…するよね…。」
突然の声に、窓側の席に座っていた藍は、飛び跳ねた。

見ると、色白の人形のような顔をした
すらっと背の高い男子…恭介がいた。
「…うん…。緊張する…。」
お互いのあまりのぎこちなさに、顔を見合わせて 笑った。

それが、今はどうだろうか…。
口を開けば、皮肉、皮肉、皮肉‼︎
皮肉しか言わないこの男を好きな理由が藍はくどいようだがわからない。

たしかに顔は、今まで会った男子の中ではピカイチだ。

顔だけは‼︎

悩んでいた藍の頭を誰が軽く叩いた。
「なーに、時化た顔してんの。」
見ると、友達の那由がいた。
「那由には関係ないこと‼︎」
「じゃあ、当ててあげる。
新崎君のことでしょ」
藍はつくづくこの女の子の鋭さに感心してしまう。
那由とは、幼稚園からの幼馴染だ。
どんなに隠し事をしても、その日のうちにばれてしまう。

藍が恭介のことを好きだと最初に気づいたのも、那由だった。

でも、那由は知らない。
ー藍がどんなに那由に対してコンプレックスを抱いているか…。

那由は完璧だ。
可愛らしい顔、優しい性格、成績優秀で女子力も高い。中学の頃は、それはモテていた。
一方、藍は地味だ。目立つことなく常に那由の後ろに付属品のようについていた。

そんな状況が、正直藍は嫌だった。

確かに、那由についていたら、守られた
でも藍は、那由が自分のことをお荷物に思っているような気がした。