「返事はあとでいいよ。せっかくだし、少し話そう。」
「ありがとう。なに話そっか?」
「じゃあ、俺が思ってる事話す。」

康太が思ってる事ってなんだろう。
そう言えば、私は康太の本音を今まで聞いた事がないような気がした。

「美穂、俺はお前が好きだ。なにがあっても側にいる。だから、嫌いじゃなかったらお前も側にいて欲しい。」

ゆっくりと、でもどこか力強く、康太は続けた。

「でも、もし嫌なら言って欲しい。お前の気持ち、ちゃんと教えてくれ。無理矢理付き合ったりするのは嫌だから。」

真剣な目で康太は私に問うた。

「嫌なわけないじゃん。好き。私も康太が好き。」

嬉しくて、少し苦しくて、私の目に思わず涙が溢れた。

ありがとう―。

小さな声が耳元で響き、その刹那、私は康太の腕の中にいた。

「ずっと側にいてな。」
「康太もね。」
「約束だぞ。」
「約束。」


まだ雪の降る2月。
岩手の寒い寒い2月。

私の心の中だけは春のように暖かかった。


「なぁ、早速だけど、今度どっかいかねぇか?」

ゆっくり私の体を話ながら、康太が言った。

「デート?」
「まぁな。来週の土曜は?」
「全然いいよ。」
「じゃあ決まり。行く場所はあとで考えとけ。お前の好きなとこ行こう。」


こうしてデートの約束をして、その日は家に帰った。