私は、濡れた手をタオルで拭いてから電話の子機を取った。


電話をかける先は、達川くんだ。


長く続く電子音の後、ガチャ・・・と電話の向こうで音がする。


『はい、達川です。』


お母さんの声だった。私は少しドキドキしながら続ける。


「もしもし、平山です。亮介くんいますか?」

『はい、ちょっと待ってねー。りょーすけぇー!電話~えっと・・・平山さん。』


少し、気分の悪くなるような沈黙。


『・・・もしもし。』

「平山です。由葵なんだけど、なんか言ってた?」

私が達川くんの一番嫌な所をついたらしく、しばらく変なムードが流れる。

『お前に、悪かったって。謝りたいって。
でも、何て言えばいいか分かんないからどうしようって、泣きじゃくってたよ。』


「そっかぁ・・・。わかった、由葵に電話するね。」


私はそう言って電話を切った。


最後に何か達川くんが言ってたけど聞いてない。