ミュージックステージアの収録を見ていた。

アイツが歌う歌は、この世界にないもので。
聴いたことないサウンドで。


なにせ藤井プロデューサーがスカウトしたぐらいだから、よっぽどのものだとは思っていたが、これほどまでとは思わなかった。

天才だと、俺もおもう。

だけど肝心なことに、アイツは自分の実力やら才能を自覚していないように見えた。案の定、わかっていないようだった。

だいたい、見ればわかる。

自分に自信があって、実力も自覚してる人間なら、もっと偉そうで。いばっていて。自分だけは別格ですオーラをバンバン出す。

でもアイツにはそれが全くなかった。むしろ不安そうで。 明らかに別格だというのに。笑ってしまいそうになる。

自分の才能にも実力にも気づけずに、変に着飾らずにありのままで存在するのも悪くはない。愛らしくて。

だけどそれだけじゃいつか痛い目みるんだ。だから俺はアイツに気づいてもらいたかった。