「……ごめん」
「…え……?」
しばらくの沈黙のあと、急に聞こえた3文字に驚く。
「俺……辻村が、好き」
「っ……!?」
「ずっと、あの告白されたときからずっと、いや、本当はされる前からずっと……俺は、辻村が好き」
なに、言って……。
「だから、ひどい態度とった……本当に、ごめん……」
……待って、どういうことだか、さっぱりわからない。
だって、好きだからあんな態度って……。
理解ができない。
「……嫉妬。ただの、情けない嫉妬。俺がガキなだけ」
嫉、……妬?
「……よく、わからないんだけど」
私が小さく言ったあとに、波岡くんが深呼吸をしたのがわかった。
「……辻村はさ、モテるんだよ。俺と付き合いだしてからも、モテてた。彼氏がいたら多少は……って考えてた自分は確かにガキだったけど、でもやっぱり予想外で、嫉妬した」
「……モテてなんかないのに……!」
「ほら、そうやって自分でわかってないし。だから余計自分だけっていうのが悔しくて……それで、妬いてくれたらって、思った」
今は後悔してるという、波岡くんの気持ち。
そんなの、私に伝わるわけがない。
「ごめん、俺が幼稚だった。自分のことしか考えてなかったから……理由はどうであれ、結局傷つけた」
「……」
「……別れようって言われて、どうしようもなく、ただ、この気持ちを伝えたかった。だけど、既に嫌われてんのかなとか思ったらなかなか……言えなかったし、実際避けられてたし」
……体に回された腕が熱い。
背中越しに感じる体温が熱い。
ずっとずっと、冷たいと思っていた彼が、今すごく熱い。

