「っ……!?」
「はぁ……はぁっ、ここに、いたのかよ……っ」
耳元で直に聞こえてくる声は、……紛れもなく波岡くんのもの。
「ちょっ、……はな、離して……!」
「っ、嫌だ……」
ぎゅっと強くなる抱き締められた腕の力。
なんで、こんなこと……!
「辻村、……っ」
苦しそうにそう呟いた彼の顔は後ろにあるから見えないけど、いつもの笑顔じゃないことくらいわかる。
「私、……今合わせる顔がない……」
もうとりあえず恥ずかしさと疑問でいっぱいなの。
「このままでいいから、聞いてほしい……っ」
頼むから、逃げないで……。
そう小さく加えて言う波岡くん。
逃げたくてもこんなに強く抱き締められたら動けないよ。

