数日後、私は放課後に森田くんを呼び出した。
外にある人気のない花壇の前に。
「『話がある』って、絶対……あれだよね?」
はははっと爽やかに笑う森田くんを見て、やっぱり素敵な人だと思う。
明らかにただの世間話の雰囲気ではないのに、そうやって笑っていられるところが、気を使える人だと分からせる。
「うん、その……告白の返事、しようと思って」
「だよな。ちゃんと考えてくれたんだってこと、顔見ればわかる」
ほら、そうやって。
人の思いを見て汲み取ってくれるところとか。
私が言い出すまで、ちゃんと待ってくれるところとか。
なんて優しい人なんだろうって思うよ。
だけど。
「……ごめんなさい。森田くんとは、付き合えない」
そう、これが私の出した答え。
森田くんのことは、嫌いじゃないし、むしろちゃんと好きになれることは間違いない。
だけど、波岡くんよりも好きって気持ちが大きくなるかと聞かれたら、はっきり頷けない。
だから、ごめんなさい。
「そ、か。うん、まあ……暗い表情で呼び出されたら、そう言われると思った」
「ごめん……」
「いや、いいんだよ。ある程度わかってたし」
自嘲気味に笑う森田くんなんて、いつもの森田くんじゃない。
そんな風にさせてしまっているのは自分だということに、悲しくなる。
「……波岡のこと、まだ好き?」
「えっ……」
俯きかけていた顔を勢いよく上げてしまった。
それはもう、肯定を意味しているようなもので。
「そこ、辻村の口から聞きたい……俺と付き合えないのは、単純に俺が無理なのか、それともそもそもまだ……波岡が好きなのか」
本当は私と遥だけの秘密にしておきたかったけど。
それは言ってはっきりしないと森田くんに申し訳ない。
でもやっぱり、渋ってしまう。
……勇気を出して、小声で。
「確かに、まだ……というか、本当はずっと波岡くんが好き。森田くんを好きになっても、きっとその“好き”を越せないって思ったの」
「そっかー…………っ、?」
突然森田くんの目線が私ではないところに向き、驚いた表情に急になった。
その視線をたどり、後ろを振り返ると……。
……え?
どうして、波岡くんがいるの……?