いろんな感情を整理しきれないまま、今日の部活は終わった。


部室で着替えて、帰ろうとグランドを出たら……。






「祐く〜ん!」



と、俺を呼ぶ甘い声がした。




振り向くと、先輩らしき人が上目遣いでこっちへ近付いてきた。



(うわ……。)



香水キッツイなー…。

厚い化粧。

怖いぐらいの、上目遣い。




なんかスゴイや。




なにが良くてこんなことするんだか理解できなくてさ。




「ねぇ、祐くんっ!
お疲れさま〜ぁ!


あたし、3年の矢口美音!
覚えてね?祐くんっ!」




矢口とかいう先輩は、小首をかしげて言ってきた。








なんのつもりだろう…。

にしても、香水キツいなぁ。


倒れそう。




「あの、俺急いでるんで。」


そう言って立ち去ろうとした俺を、先輩は腕を絡めて引き止めてきた。




「あ〜っ!!

ちょっとぉ、待ってよぉ!


祐くん、噂通りの爽やかくんだねっ♪

優しい優しい爽やかくん。


んふ、あたし、祐くんのこと諦めないから♪」















は?













爽やかくん?




なんだそれ。




そんなんじゃねぇし。





諦めないから、とか言われたって、知らねぇし。





ハァ。



「……失礼します。」






今の俺は明らかに不機嫌だろう。



そりゃそうだ。

なにが爽やかくんだ。





「あっ、うん♪
また明日ね!


ばいばーい、祐くんっ♪」



矢口とかいう先輩は、ピョンピョンしながら手を振っていた。






よく分かんない人。