走り終わって、呼吸を少し整えていると、水沢がすぐに駆け寄ってきた。




「すっごいね!!!!
桜井くん!!!


桜井くんの走りは…
どこまでも透明で、真っ直ぐだね。

微塵の迷いもないくらい。
真っ直ぐ、前だけ見つめてる、透明な風みたいな綺麗な走りだった…!」





「……ッ!」


この子、天然?

と思わずにはいられないほど、水沢は素直で。



ふつーの子なら口にしないようなことをサラッと言ってきた。



(…透明で、真っ直ぐ…)



素直に、嬉しかった。


スゴいと言われるのはあるものの、こんなことをストレートに、お世辞を言っている様子もなく言われたのは初めてで、恥ずかしくなり咄嗟に下を向いた。





すると水沢は、


「桜井くん…?
熱あるの?
顔、真っ赤だけど…」



と、癖っ毛でふわふわとしているポニーテールを揺らしながら、首をかしげて顔をのぞきこんできた。


「…ッ!?
な、なんでもない!
なんでもないから!!」



これには、さすがの俺も驚いた。


身長差が大きいため、本人は自覚ないと思うけど、上目遣いに見える…。



(…確信犯か?)



と疑ったものの、水沢はキョトンとしていて。




天然って一番怖いな…

と、改めて思った。







― 風
祐輔side * end