「春〜♪」
コイツが、来るまでは。
「あっ、颯くん!!」
水沢は席を立つと、教室のドアのところに立っていた北山の所へと行ってしまった。
"颯くん" だって。
俺は "桜井くん" なのに。
そんなちっちゃいこと気にしてるようじゃ、ダメなんだよなー…。
「桜井。
春琉といるあのイケメン君だれ?
春、とか呼んでるしかなり仲良さげだけど?」
さっそく佐々木が、北山と水沢の方を見ながら聞いてきた。
ついでに、ちゃっかり海斗も聞いてる。
「…あいつは、水沢の幼なじみの 北山颯 だよ。」
「はーちゃんの幼なじみ〜?
どーりで仲良いわけだ。
で、いいの?祐輔くん♪」
海斗が、からかうように聞いてきた。
「いいって、何がだよ。」
「いやーん♪
祐輔くん、顔!顔!
こわぁーい♪」
なんてぶりっ子のマネをする海斗。
「何が? じゃないわよ!
このままじゃ春琉、とられちゃうじゃないの!」
…分かってるよ。
「なぁ、佐々木?
アイツ…、態度からして、北山は水沢のこと好きだと思う?」
ずっと気になってたこと。佐々木に聞いてみた。
「そりゃ、好きでしょ。
春、春、春 ってさぁ!
なにげに頭とか触ってるしね。」
……やっぱりかぁ…!
うわ、俺、まさかの失恋か…?
「しかも北山くん、イケメンだもんね。
けっこう人気あるよ?
松田と桜井ほどじゃないけど。」
「まぁな〜♪」
調子に乗ってる海斗。
幼なじみって、俺なんかよりもずっとずっと繋がってんだよな。
