タロットカードの信頼度?


タエは、趣味でタロットカード占いを始めてもう5年ちかくなる。


よく当たる!と仲間内では評判がいい。


でも、占いというのは不思議なもので、他人のことは結構いい線をついているのに、自分のこととなると、ほとんど当てにならない・・・



その証拠に、タエは彼氏いない歴○年という肩書からは、なかなか開放されない。


そして、さっきまた同僚のカワサキ君から、占いの依頼を受けた。


タエが、彼を占うのは今夜で3度めだった。


会社の近くのお寿司屋さんの座敷席で、上寿司とワインをおごってもらう。それが、占いの報酬だ。


「さぁ、では、カワサキ君。今回、占って欲しいのはやっぱり恋愛かしら?」
上寿司をたいらげ、赤ワインを2杯ほど空けて。ほろ酔い気分で上機嫌のタエは、カワサキと差し向かいで座っていた。



「はい、やっぱり恋愛でお願いします。前々回も前回も、タエさんの占いでは、プッシュが足りない!もう少し強気で、押せばなんとかなるってことだったんですけど・・・」


カワサキはそう云って、苦笑いを浮かべながらグラスのビールを空けた。


「歯切れ悪いわね、カワサキ君!で・・・押した結果はどうだったのよ?」

ワイングラスに唇を寄せながら、タエが云った。



「タエさんの占いを信じて、押してみたんですが、どうも曖昧な返事しかもられなくて。というか、その娘と面と向かっていろいろと話しているうちに、なんかその娘への気持ちが急に冷めちゃったんですよね~」



「あらぁ。それは残念だったわね・・・でも、冷めるなら、そう、早ければ早いほどお互いのためには良いかもしれないわね」



「えぇ。そういう意味では、タエさんの占いはバッチリでした」
カワサキが明るく笑った。


「そうそう、やっぱり端から見ていた時の印象だけじゃ、わからない部分も多いからねぇ~、特に男女の関係はね・・・」

「そうです、そうです!会話してるうちに、それまで気付かなかった面も見えてくるものだとよーくわかりましたし」


「ということは、今回はまた別の新しいお目当ての女性が出来たってことなのかしら?」タエは、3杯目のワインを空けた。


「ハイ!そうなんです。


かなりその相手のことが気になって仕方ないんです。一応、その人には恋人はいないっていう噂なんですけど、女性っていうのはわからないものですからね、実は裏で不倫していたり、見えないところで適当に遊んでいたり・・・」


「そうよ!女性は、男性よりはるかにしたたかよ!。みんな裏でいろいろと楽しんだり、悩んだり、してるんだから~」


「でしょうね・・・。あぁ~コワ」
カワサキが笑った。


「では、お互い酔いつぶれてしまわないうちに、とりあえずカワサキ君の気になる女性について、占ってしんぜようではないか・・・」


タエはタロットカードを何度も何度もシャッフルして、テーブルの上に広げ占い始めた。


「なるほど、なるほど。そっかそっか・・・」
ぶつぶつと言いながら、タエはカードの意味を自分の頭のなかで展開させている。


「どうなんでしょう?告白したら、うまくいく可能性あります?」


カワサキが、タエの顔をまじまじと覗きこむ。



「う~~~ん。これは、かなり良いわ!大丈夫。今度は、前回よりも文句なしに相性バッチリよ。わたしが責任持つわ。絶対、ふたりはラブラブになれる。タロットカードはそうはっきり告げてます!」



そう云って、タエは自信ありげにカワサキに顔を向けながら、二度三度と頷いた。



「いやぁ~嬉しいな!タエさんに、そう云ってもらえると、なんだかもう、うまくいっちゃったような気になってきますね~」



占いの結果を聞いて、機嫌を良くしたカワサキは、ビールとワインの追加を頼んだ。



「では、僕。タエさんの占いを信じて、勇気を出して告白してみます!」



「うん、このカードの暗示からしたら、絶対にそうすべきよ!もしこれで、ダメって云われたら、わたしが責任持つわ!」



酔も手伝って、タエは強気に言い放った。




「はい!では、お言葉に甘えて。タエさん、僕、タエさんが好きなんです!お付き合いしてください?」




カワサキは、タエの顔を真剣な眼差しで見つめた。