決して祖国を見限った訳ではない。

本心から祖国を捨てた訳ではない。

しかし生きる為に、生き延びる為に、谷口はそうするしかなかったのだ。

明日食べるものにも事欠き、飢餓に苦しむ祖国に残っていては、野垂れ死ぬのが目に見えていたから。

だが。

「他に言う事がないのなら任務を遂行させてもらう」

李は何の感慨も湧かぬとばかりに呟く。

これが、かつて谷口の親友だった李 正吉の今の姿。

人民軍指揮官にして、戦術自衛隊をはじめとするタスクフォースに宣戦布告したならずもの国家の一員だった。