撃たれても、腕が千切れようとも、祖国の為に命を捨てられるのだ。

他人を殺す事など、何の躊躇いがあろうか。

58式小銃の引き金に指をかける李に。

「待ってくれ!」

谷口は叫ぶ。

「何だ、時間稼ぎや命乞いなら即刻射殺する」

抑揚なく言う李。

「…俺は…国を捨てたんじゃない…今でも祖国の事は愛している」

俯き加減に言う谷口。

「しかし…あのまま祖国に残っていたのでは、いずれ両親は飢餓に苦しみ死んでいた。だから一か八か、一面に地雷が敷設されている軍事境界線を抜けて両親と共に亡命を試みたんだ…結果として、助けたかった両親は地雷で死に、俺一人が生き残ってしまったが…」