「よし、敵包囲を突破するぞ。十字隊形!」

小川が指示を出す。

敵の攻撃に対して速やかに部隊の火力を集中でき、あらゆる方向からの敵に対処出来るフォーメーションだ。

最大火力を以って、一気に人民軍の包囲を突破しようとする。

その時だった。

「撃ち方やめっ!」

人民軍側の指揮官らしき男が、部下の射撃を制した。

「っっ…!」

麗華と共に三浦を担ぎ上げようとしていた谷口は、その男の顔を見て息を呑む。

黒髪短髪、無表情ともとれる厳しい表情、半袖の白いシャツの上に黒い防弾チョッキ、下は迷彩ズボンと軍靴。

手にした58式小銃は、谷口達に向けられたままだった。