しかし。

「俺は」

谷口は小川の顔を見た。

「俺は戦術自衛隊、谷口 誠一等陸士です…亡命した時に、かつての祖国と名は捨てました」

彼はキッパリと告げる。

「今更後悔して戦えなくなるくらいなら、はじめから亡命なんてしない…そのくらいの覚悟はしているつもりです」

「谷口君…」

その覚悟と心中、察して余りある。

豊田が谷口の手を握る。

その手の温もりだけで、谷口は強く自分を保っていられた。