翌日から授業はなくなり、全て文化祭の準備に費やされた。
「…鎌首!これ切って!」
「鎌首さん!これ着てみて!」
「鎌首ー!皿がたりねー!」
大忙しだ。
私は全てこなして、忘れていた試着をした。教室に戻ってくると「「おぉ〜」」と頬を赤らめられた。
「…どう、かな」
「可愛い〜!やっぱ銀髪綺麗!」
「にあってると思うぜ?」
「お嬢…可愛い…!」
「…おい駄犬、写メはやめろ」
「え〜あ、見せておいでよ!お嬢の姿見たいと思うよ〜?」
「えっ鎌首さん…そういう人いたんだ!いいよ、行っておいで!」
「だ…だが…」
「「ほら、早く!」」
またも押し切られてしまった。
携帯を操作して謙也さんを電話で呼び出した
『…はーい?』
「あ…謙也さん?」
『おー珍しいな、どうした?』
「今から教室行っていいですか…?」
『…んー…ああ、大丈夫だ。入ってきていいからな』
「は、はい。」
電話を切って階段を登る。二年三組のドアを少し開けると気づいたのか謙也さんが笑顔を浮かべて駆け寄ってきた。
「け…謙也さん」
「おう。…あ、服…」
「そうなんです。…どうですか?あ、似合わないならそう言ってくれて…」
「可愛いっ!誰にも見せたくねえ!」
ぎゅう!と勢いよく抱き締められたので背中に手を回す。目を開けると驚いたような顔の二年三組員たちがこちらを見ていた
「…謙也さん」
「なんだよ?」
「凄く…見られてます…」
「ん?」
謙也さんは体を離すと振り返った。
「おいテメーら。俺の嫁をあんまじろじろ見んな。怖がってんだろ」
「…え!?島津くん彼女いたの!?」
「あの鬼島津に!?」
「マジかよ!どこの極道娘だ!?」
「ホントいい度胸してるよなお前ら…」
わらわらとこちらに寄ってくる先輩たちに恐怖した。
「…大丈夫か、蒼?」
「ん…どうだろう…」
「ホレみろてめーらの所為で気分わりーってよ」
「いや。あの…謙也さん?」
「え、大丈夫?」
「休んでいきなよ!丁度ジュースあるよ!」
「いや、御迷惑になるのは…」
「お言葉に甘えて休んでけ。な?」
「…謙也さんがそう言うなら…」
畳が敷き詰められた端の角の方に座った。体育座りしたら「下着が見えるだろ」とか咎められてしまったので女座り。
「蒼、ほらジュース」
「ありがとうございます… ?飲みかけ?」
「おー。俺の。悪いな、みんな飲んじまって余りが無かったんだ」
「いえ、ありがたいです」
スポーツ飲料を二口くらい飲み込んだ。
はあ、とため息をつくと謙也さんは髪を撫でてくれた。少し安心して壁に背をつけた。相当疲れていたのか眠くなってきた。
「…眠いか」
「…謙也さんと居て…安心して…」
「眠っていいぞ。八犬に連絡入れとく」
「邪魔でしょう…?」
「邪魔なんかにゃなんねーよ。いざとなりゃ俺が運ぶ」
「…じゃあ…おやすみ…なさい」
謙也さんの笑顔を最後に私は眠りに落ちた。
───
「…う、…蒼、蒼!」
「ん…謙也さん…?」
「おう。起こしちまって悪ぃな。俺のクラス、昼休みに入っちまったんでな」
「何時ですか…」
「11時、お前が来たのが9時な」
「…あ、クラス…」
「連絡したから大丈夫だ」
「…ご飯…食べましょうか」
「おう…お前まだ眠気覚めてねーだろ」
「うん…」
「ま、覚めたらでいーよ。」
「はい…謙也さん…」
「んー?」
「…好きですよ」
ぼーっとしていた私はいつの間にか弁当を持ってきてくれていた謙也さんに礼を言って教室の片隅で昼飯を食べた
「…ごちそうさまでした」
「お粗末さまです。…そろそろ、私も戻りますね」
「ああ、頑張れよ」
「はい」
頬にキスしあって私は教室に戻った。
謙也さんが問い詰められていることにも気づかずに。

