私は夢を見た。

雨が降っている。

「父さぁん…行っちゃやだぁ…」

ああ…これは。

父さんの姿を最期に見た日の記憶だ。

あの時、父さんは仕事で鉱山に…

「父さぁん…行っちゃやだぁ…」

幼い私は、何かを感じたのかも。

「ごめん。でも、行かないといけない」

「嫌だ、行かないでっ!」

「ごめんね…」

「嫌ぁ…」

「それでは行って来ます」

「行ってらっしゃい…」

「嫌だ、嫌だぁあああ!」

悲痛な私の悲鳴は、雨に掻き消されて、
父さんには届かなかった。