「波瑠~?大きい声出してどうしたの?」
何も知らない葵がやって来た。
「波瑠、みんな待ってるよ。戻ろう?何かあったの?」
葵が手を握ってくれた。
小さくて冷たい手だけど、どこか温かくて落ち着く手。
なんだかうれしくて、涙が出てきた。
「波瑠!?どうしたの?もしかしていじめられたの?」
わたしの涙を見て葵が焦る。
「は~?そんなわけないじゃん」
「勝手に犯罪者にしないでよ」
ごたごたと周りが言う。
「ごめん。今日は先帰るね。言っといて。」
葵の手を放し、走ってこの場を立ち去った。
「波瑠!」
「波瑠、待って!」
「蒼井!」
葵と茉那と神崎くんの声が聞こえる。
でもそんなの無視。
そのままわたしは、カラオケ店の外に飛び出した。

