ひとりカラオケ
深夜午前2時。
わずらわしさから開放されて、ひとりになったわたしは単身カラオケルームへ向かう。
最近の楽しみは、これ。ひとりカラオケだ。
毎度おなじお店へばかりへ通ってしまうと、スタッフが親しげに話しかけてくる。それが面倒でウザくて、毎回違う店を物色して入る。
わたしにとって、歌っていうのは、ストレスの解消にはもってこいの最高の趣味。
歌っている間は、人付き合いも愛想笑いも、面倒な自分自身を忘れていられる。歌の主人公に完全になりきってしまう時間。現実から、完全に開放されてとてもいい気分転換になる。
若い男性スタッフが、少人数用のルームへ案内してくれたあと、オーダーを聞いてきた。
「お飲み物は何にします?」
「赤ワインあったら、とりあえずそれをお願いします」
わたしは伏し目がちに、メーニューをめくって中身を確認してるようなふりをしながら、いつも赤ワインをオーダーする。
軽めのアルコールがあって、他人に干渉されない時間、そして歌があればそれで十分なのだから。
「はい、では、リモコンの使い方とかは大丈夫ですか?」
優しげに、そのスタッフが声をかけてくれた。
「えぇ、大丈夫。何か解からないことがあったら、こちらから聞きますから」
わざと事務的に、目も合わせずに、言葉を返した。
はやく、ひとりにして欲しい。
わたしの今の望みは、だたそれだけ・・・
スタッフがさり、ひとり残された小部屋で、わたしが選曲するのはいつも同じような曲ばかり。
それは、何十年も昔の古い情念たっぷりの演歌。
まだ56歳の子供の時分に、おじいちゃんとおばあちゃんが楽しみに観ていた歌番組を一緒に観ながら自然と覚えてしまった曲達だ。
その頃は、歌詞の意味などまるでわからずに、ただただTVの歌手を真似て歌っていたものだった。しかし今は、その歌詞のなかにどっぷりと浸かって、なりきってしまうのが楽しくて仕方ない。
情けだとか、恨みだとかを歌った女の演歌が特にわたしの好みだ。
作り笑いを浮かべて、嫌な相手にも愛想を振りまいている自分を忘れるのには、そういった歌が一番。
表があれば、裏がある。所詮この世は一幕芝居。
顔で笑って、心で泣いて。いつか幸せつかむ、その日まで・・・
そんな、時代がかった歌詞が、たまらくいい!
みんな馬鹿ばっかり!
あんたたち、マジ最悪!
ついでに、こんなわたしはもっと最悪!!!
日頃人様に向かって口にできない言葉を、歌の世界で言葉にするだけで、ストレスは軽くなる。
余計なフラストレーションを貯めこまずに、かわいいオンナの子をやって行くには、どこかでしっかりと発散しなきゃ無理。
きっかり1時間。ワイン3杯と、小皿のポテトチップだけで、歌い喚いた。
いつものように、晴れ晴れとして、カウンターで支払いを済ませて、元の自分へと戻ってゆく。
「あの人、もしかしてアイドルグループの○○って娘じゃない?」
「わたしもそう想う!絶対そうよ。かなりTVの時とはイメージ変えるけど、バレバレよね~」
そんな声が、カウンターの奥から漏れ聞こえてきた。
そう、わたしはアイドルグループの人気者○○よ!
やれやれ・・・このお店には、もう来れないや・・・
そしてわたしは、明日も満面の笑みを浮かべて明るく歌って踊る、キャピキャピのアイドルだという現実を思い出す。
深夜午前2時。
わずらわしさから開放されて、ひとりになったわたしは単身カラオケルームへ向かう。
最近の楽しみは、これ。ひとりカラオケだ。
毎度おなじお店へばかりへ通ってしまうと、スタッフが親しげに話しかけてくる。それが面倒でウザくて、毎回違う店を物色して入る。
わたしにとって、歌っていうのは、ストレスの解消にはもってこいの最高の趣味。
歌っている間は、人付き合いも愛想笑いも、面倒な自分自身を忘れていられる。歌の主人公に完全になりきってしまう時間。現実から、完全に開放されてとてもいい気分転換になる。
若い男性スタッフが、少人数用のルームへ案内してくれたあと、オーダーを聞いてきた。
「お飲み物は何にします?」
「赤ワインあったら、とりあえずそれをお願いします」
わたしは伏し目がちに、メーニューをめくって中身を確認してるようなふりをしながら、いつも赤ワインをオーダーする。
軽めのアルコールがあって、他人に干渉されない時間、そして歌があればそれで十分なのだから。
「はい、では、リモコンの使い方とかは大丈夫ですか?」
優しげに、そのスタッフが声をかけてくれた。
「えぇ、大丈夫。何か解からないことがあったら、こちらから聞きますから」
わざと事務的に、目も合わせずに、言葉を返した。
はやく、ひとりにして欲しい。
わたしの今の望みは、だたそれだけ・・・
スタッフがさり、ひとり残された小部屋で、わたしが選曲するのはいつも同じような曲ばかり。
それは、何十年も昔の古い情念たっぷりの演歌。
まだ56歳の子供の時分に、おじいちゃんとおばあちゃんが楽しみに観ていた歌番組を一緒に観ながら自然と覚えてしまった曲達だ。
その頃は、歌詞の意味などまるでわからずに、ただただTVの歌手を真似て歌っていたものだった。しかし今は、その歌詞のなかにどっぷりと浸かって、なりきってしまうのが楽しくて仕方ない。
情けだとか、恨みだとかを歌った女の演歌が特にわたしの好みだ。
作り笑いを浮かべて、嫌な相手にも愛想を振りまいている自分を忘れるのには、そういった歌が一番。
表があれば、裏がある。所詮この世は一幕芝居。
顔で笑って、心で泣いて。いつか幸せつかむ、その日まで・・・
そんな、時代がかった歌詞が、たまらくいい!
みんな馬鹿ばっかり!
あんたたち、マジ最悪!
ついでに、こんなわたしはもっと最悪!!!
日頃人様に向かって口にできない言葉を、歌の世界で言葉にするだけで、ストレスは軽くなる。
余計なフラストレーションを貯めこまずに、かわいいオンナの子をやって行くには、どこかでしっかりと発散しなきゃ無理。
きっかり1時間。ワイン3杯と、小皿のポテトチップだけで、歌い喚いた。
いつものように、晴れ晴れとして、カウンターで支払いを済ませて、元の自分へと戻ってゆく。
「あの人、もしかしてアイドルグループの○○って娘じゃない?」
「わたしもそう想う!絶対そうよ。かなりTVの時とはイメージ変えるけど、バレバレよね~」
そんな声が、カウンターの奥から漏れ聞こえてきた。
そう、わたしはアイドルグループの人気者○○よ!
やれやれ・・・このお店には、もう来れないや・・・
そしてわたしは、明日も満面の笑みを浮かべて明るく歌って踊る、キャピキャピのアイドルだという現実を思い出す。