「へえ。なんで?」



「気分が沈んだときに見ると、元気がもらえる気がするんです」



「そうなんだ」



そう言うと、先輩は空を見上げて深く息を吸った。



綺麗な横顔を見上げる。


「はあー」



静かに息を吐いた先輩と目が合った。



その顔には、さっき一瞬だけ見た悲しみの表情が浮かんでいる。



だけど先輩はまたすぐに笑顔になった。



「ほんとだ。なんかそんな感じするね」



「…はい」



なにがあったかなんてわからない。



それに、これからもそれを知ることなんてないだろう。



「そろそろ戻らなきゃだな。付き合ってくれてありがと」



「いえ」