賢一郎と真朝が違う部屋へ行き、葉子と杏だけとなった。


「杏‥‥あなた症候群にかかっているのね。」


言って返事がかえってこないとわかっているが、葉子はとても穏やかな優しい顔で話しかけた。


その言葉に柴犬は反応し、葉子を見つめてまた苦しみ始めた。


「わかってちょうだい、杏。私たちは家族を守りたいの。」


そう言ってソッと柴犬持ち上げてゆっくりと玄関へと向かう。


「私たちは杏が大好きだったわ。今もよ。‥‥サヨウナラ。」


葉子は目から溢れだす涙を拭きながら、玄関のドアを開けて柴犬を外へ出した。


柴犬が振り返った頃にはもうドアは閉まっていて、ドアに何度か体当たりした後ヨロヨロとその場を後にした。


「出したんだな‥‥。」


「‥‥‥えぇ。」


2人とも沢山涙を流し、家族の為だと自分たちに言い聞かせた。


それから1時間が過ぎた頃、家の近くで悲鳴と救急車のサイレンの音がなっていた。


《宮野家、愛犬がバッドエンド症候群にかかったものの、助かった。end。》