少し持ち帰った仕事を片付けていると、
スマホが振動する。




「はい。」



「なぁに?彼女からのラブコールなのに、
その電話の出方。」



「悪い悪い、というかお前こそ、俺の電話に
ほぼ出ねーし。」



「仕方ないでしょ?
タイミングが悪いんだから。」




はいはい。
俺が悪いですよ。


心のなかでため息をつく。



「まだ会社?」



「そう、社長がまた脱走。」



「はは、相変わらずだな。ご苦労様。」



「もう慣れっこよ。ありがと、じゃあね。」



「何か用事あったんじゃないのか?」



特に用件も聞いてないのに電話を切ろうとする早紀に慌てて聞き直すと、



「ん?ううん。
特に用事ってわけでもないけど…」



「けど…?」




俺がそう聞くと、電話の向こうでクスッと笑ったと思うと早紀は…




「誠二の声、聞いておこうかなって…ね?」




それだけ告げると、あっさり電話を切ってしまった。



待ち受けに戻ったスマホの画面を見つめながら、俺は少しだけホッとした。




「んだよ…可愛いとこあるじゃん。」




ただの気まぐれな電話かもしれないけど、ちょっとは俺を支えに思ってんのかな…



何だかんだ俺と早紀は、こんな距離感が合ってるのかもな。



そうひとり納得して、ベットに寝転んだ。