怖かったのは、私だけじゃない。




痛かったのは、私の頬っぺただけじゃない。





「もう。拓さんってほんとに…」



「ん?なんだぁ?」





いっつもそう。
ふざけてるようで、ちゃんと本当のことを私に教えてくれる。


ホントに頼りになるよ、アニキ。



でも、そんなの口に出して言えないからさ。




「拓さんって、何で彼女できないんだろね。」



「うるせーやい。」




ふふ。こんなに優しくて頼りになるのに。


ま、暑苦しいのが100倍表立ってるもんね。




私はそんな拓さんを横目に、テーブルをもくもくと拭いた。




…ブゥーブゥー…




ん?



ポケットに入れていたスマホが震えた。



着信画面に出た名前を見て、




「今日は忙しい日だなぁ。」




そう呟いてその電話に出た。




「もしもしー。」




『鈴ー、そろそろ大好きな俺に会いたくないかい?』




いつもの口説き文句に思わず吹き出した。