「勝手なことばっかり言わないでくれる?」





冷静ではない声だった。
そう感じた時には、そのネイルが綺麗に施された手が私の腕を掴んでいた。



否応なしにそのまま部屋から引きずられるように連れ出された。



階段で転びそうになった時は、さすがに冷や汗が出た。





「早く出なさいよっ。」



「いっ…。。」




玄関のドアを開けた瞬間に半ば投げ飛ばされるように外へ出された。



掴まれていた腕が痛くて思わず、顔をしかめた。



抵抗する隙もない私に早紀さんは…





ーーーーーーパシッ。




「おい、早紀っ!何してんだよ!」





早紀さんの降り下ろされた手のひらは、綺麗に私の頬にきた。



叩かれた勢いでよろけた私をとっさに誠二くんが駆けよって支えてくれた。



叩かれたはずなのに、何が起こったのかよく分からなかった。





「あなた、どういうことか分かってるの?」




「はい。」




「誠二を私から取るってことね?」




早紀さんの言い方に我慢ならなくなって、ついカッとなって言い返す。





「取るなんて、そんなモノみたいな言い方やめて下さい!それに誠二くんのこと好きだけど…それでも私は誠二くんの気持ちを大事にしたいんです。早紀さんみたいに、自分よがりなの、良くないと思いますっ。」





一気に思ってた事を言ってしまうと、さっきまでの早紀さんに対する怖さなんて感じなくなっていた。




しばらく早紀さんは私を無表情に睨んでると、
ふと、どうでもいいような感じで目を逸らした。