「誠二くんは悪くありません。
私が、わがまま言ったから…」



「鈴ちゃん、それは俺だって…」



「誠二は黙ってて。」




私の言葉を遮った誠二くんの言葉も、あっけなく遮られた。



ごめんね、誠二くん。
私があんなわがまま、しなかったら…
ううん。そんなの今言ったってもう遅い。





「ノーマークだったわ、これは私のミスね。
まさか、あなたみたいな子どもが誠二を誘惑してくるなんてね。」




はぁ…とため息をつきながら、首をかしげた早紀さんは、私を嫌そうに見た。




「私、もう子どもじゃありません。」




たまらず、言い返した。


それは早紀さんみたいな大人から見たら、学生なんてまだまだ子どもに見えるかもしれないけど、それでも私は…




「好きな人に恋人がいて、キスして欲しいなんて言っちゃいけない事くらいはわかります。」




そう、イケないことだけど…




「あら、じゃあ大人なら人のモノを取ってもいいってこと?」



「誠二くんはモノじゃありません。」



「そうね、でも誠二は“私の”恋人よ?」



「分かってます。」



「じゃあ、子どもじゃないなら分かるわよね?すぐ私に謝るべきじゃないかしら?」




私を見る早紀さんの目が笑っていて、怖い。




「謝ります。
でも、これだけは言わせてください。」




私は…もう逃げない。





「ごめんなさい。
でも、私は誠二くんが好きなんです。」






それだけは譲れない。
誰よりもずっとずっと誠二くんが好き。



隣の誠二くんを見た。
どんな事を思ってるのか分からないけど、ずっと目を見つめてくれた。